オモイデ狂いの季節

自分用の観劇・鑑賞などの備忘録。気が向いたときに。ストリップのことが多め。

「恥の多い生涯を送って来ました。」

10月結のうちの3日間で大和ミュージック劇場にて開催されていた「奇綺SM」に行った。

前身となるイベントにも何度か足を運んだことがあるけれど、SMだけでなくあらゆるフェティシズムが爆発していて、綺麗で奇怪で愉しいイベント。お客さんたちも毎回来られているような熱心な方が多く、演者さん側との内輪ノリみたいなのも見受けられるんだけどそれが全然こう…いやな身内ノリみたいな感じじゃなくて、あたたかく楽しそうで、イベントの雰囲気もすごくからっとしているというか。良いな~と毎回思う。
だから満員御礼になるのはわかってた、丸一日居て楽しいのもわかってるんだから早く行って席取ればよかったんだけど、午前中しか開いてない役所にいく用事を済ませたりしてたら叶わずだったので、おとなしく2回目公演の途中から入った。当たり前に立ち見も立ち見。満員!

入ったらちょうど京はるなさんのオープンショーが始まるところで、もう一本早い電車に乗れてたらはるなさんのソロショー間に合ってたのかよ~~~ワーーーーンになった…

 

春theBLUEFILM嬢とこだちゃんさんのチームショー、「いつか王子様が」しみじみよかった…。
物語の王子様に憧れるようないたいけ可愛い少女が、絵本から抜け出てきた王子様に、王子様だけのお姫様にしてもらって……て流れなのだけど、どちらもキャラデザ天才バチバチにハマってたなあ。

こだちゃんさんの美少女はその純真無垢さが、たとえば指先の動きひとつや偶に恥じらってみせる仕草からも伝わるし、しゅんちゃんの王子様は王子然としたキラッとした振る舞いをしながらどこかちょっと少年っぽいのがいい。

綺麗な色のリボンを絡めた手と手を取り合い、抱き合った二人は幸せなキスをしてハッピーエンド、…とはならずに、最後のオチがしっっっっかり怖くて、エッ…と不意をつかれ、よかった。少女は王子の手によって「永遠」になってしまいましたとさ…。でも、あれはあれでハッピーエンドなのかもしれない?少女は幸せいっぱいのまま閉じ込められたわけなのだし…
しゅんちゃんが過去に自分の演目でも時折見せてくれた「人ならざるものが憑依してるときの笑い方」がめっっっちゃくちゃ怖くて(ほめてるよ)ほんとにいいんだよな~~

 

そして、しゅんちゃんのこの日のソロショーの演目「人間失格」がすごくて、ガツンとぶん殴られてしまった。という話をしたいんです。
恥の多い生涯を送って来ました、のフレーズで始まるこの演目は、もちろん同題の小説の主人公や、そこに反映されてるといわれてる作者の半生がモチーフになっているのには間違いないと思うんだけど、徹頭徹尾しゅんちゃんだ!!!と、観てる間じゅう強く感じていた。
生きるのしんどい辛いもうやめたい死んじゃいたいのに生きちゃってるし生きてたい、そういう感情の奔流を、言葉にはできないぶん身体じゅうで叫んでるようだった。し、それは紛れもなく演目の、道化を演じ続けて破綻した主人公のものだとわかってはいるんだけど、もしかしたらその一端はしゅんちゃん自身の発露でもあったりするのかもな、と思った。
演目の中で、破綻してしまった男の役と、その苦しみに共鳴して一緒に死んでくれる女役の二役を演じる形になっていて。その男と女の所作の違いというか演じ分けがすごかった。烈しくて哀しくて、その選曲とも相俟って泥臭くて、諦念の手触りみたいなものがぐっと身近に感じられたからか、よくわからない涙が出た。
同題の小説は、遥か昔サブカル女学生時代に一度読んで「なるほどわからん…」になり、大人になって大分経ってから読んでも「やっぱりわからんはわからんけど前よりもわかるかな?」くらいになっていた。

主人公はやっぱりだめなひとだとは思うけど、大人になった自分と似通ったところを主人公の中に見つけてしまうからだと思う。普段見ないようにしている自分の駄目さだとか、生き難さ。なんとか飲み込んだつもりでいたのに、偶に魚の小骨みたいに喉に引っ掛かる何か。
その小骨みたいな感覚が見事に思い起こされて、観たあとも暫く消えない。観終えたあとなにかを消耗したらしく、文字通りふらっふらになりながら帰った。駅前のコンビニで白湯買ったもん。白湯て。消耗しすぎでしょ。でもペットボトルでお湯売ってくれるの嬉しい、もっと色んな自販機とかコンビニで買えるようにしてほしい…

 

人間失格、作品のモチーフとしては暗い部類に入るんだろうけど、それをステージで演じきるしゅんちゃんは、命を燃やしてるって感じがして、めちゃくちゃに鮮烈だった。これだからしゅんちゃんをみつめるのはやめらんねえわと思った。

ポラは無しで演目後そのままオープンショー、汗だくのショートカットの髪を掻き上げてからチップをくわえてくれた笑顔がきれいで泣きそうになってしまったじゃんね。オレ、オマエ、スキ………

 

この日、実は大和来る前に整骨院も寄ってきたようなボロボロの体だったので、立ち見で長時間は無理だわ…と判断し、場内にいた時間は短かったのだけど、藤白みかこ女王様の観客調教や、愛子さんのソロショー、結奈美子さんの自吊りのショーはフルで観た。

観客調教は和やかながらしっっっっかり痛そうだったし女王様の客あしらいがお上手すぎてめちゃくちゃ笑ってしまった。愛子さんの鮮やかな入れ墨が本当にきれいで、舞う姿が完全にヒトを捕食する美しい女郎蜘蛛の化身みたいで嘆息した。結奈美子さんはいつどの演目をされていても一秒も目が離せなくなっちゃうな…。エッエッエッそのお靴で!?と焦ったけど、苦悶の表情さえ淫靡で、縄が食い込む肢体も綺麗で、目が離せなかったです。

いつも観客全員を手玉に取るようなゆいなみさんのオープンショーを拝見するのが大好きなんだけど、今回あのとんでもないお靴を履いたままだったのでゆいなみさん自身は立ち上がらないオープンショーで、でもあの不敵な雰囲気はそのままで、すごいな~と思いました。
あとイベントのオープニングがめちゃくちゃ可愛かったのですがあれは各回必ずやってたんですかね…?ほら他にも観たかったものだらけじゃんやっぱり朝から行きたかったな…
奇綺SM、前述したように軽やかな雰囲気の妖しく楽しいイベントなので、今度はまたゆっくり時間とって行きたいなと思います。楽しかった。