オモイデ狂いの季節

自分用の観劇・鑑賞などの備忘録。気が向いたときに。ストリップのことが多め。

2021年6結・渋谷道頓堀劇場

6結・道劇。好きな踊り子さんばっかりでごはんを食べにいく暇がまったくない。幸せな悩み。この日、何枚目だかのスタンプカードが満券になった。スタンプ5個でドリンク1本サービスをいつも引き換え損ねてそのまま満券つかっちゃうから、今回は満券使う前に忘れずに引き換えた。えらい。

 

●eyeさんの「人狐」、ケモミミとeyeさんのいつも素敵な和装の使い方が大好きな私が歓喜。衣装や小道具だけじゃなくて演目に合わせて変えられるメイクも髪色も全部全部しぬほど似合うし研究して拘られてるんだなというのが見れば見るほどわかる。

ダンスの中に物語がちゃんと乗せられてる。愛しい狐の亡骸を体内に取り込んだら一人と一匹はひとつになった、というような解釈をしたんだけど合ってるかな。多分合ってると思う。舞いながらひとつの体で狐とヒトの演じ分けが見事にされてるのがすごくて、ひとつの器のなかにふたつの魂が同居していて、ヒトの半身がもう半身である狐をいかにもいとおしそうに愛でる仕草をするところが特に好きだった。

もうひとつ出されていた「Be Italian」、すごい!!!以外の語彙を失ってしまった。eyeさんが手のひらから砂をこぼす仕草をしてからひとたび目線を投げて踊りだせば、そこは一気に地中海の海岸になる…? 手や腰だけじゃ足りず高く上げた足先でもタンバリンを打ち鳴らしながら踊るeyeさんは体全部がリズムで出来ているみたいだったし、すごい技巧のチェア技を艶っぽく披露したあとに躍り出る盆でも、客の手拍子まで完全に操作しちゃう楽器みたいだった。一瞬も目が離せなかった。

 

●埃さん、いつ拝見しても独特のことをなさっていてすごい。前観たときにマッスルな筋トレ演目をだされていてそれがめちゃくちゃ印象に残っていたんだけど、この日はひとつめでネオンカラーの縄での自縛(目を凝らしてみていても本当になにがどうなっているのかわからない滑らかさと手際のよさでとんでもないことになってしまう)と、ふたつめで青いティシューで作ったハンモックで空中をきもちよさそうに揺蕩う姿を拝見できた。埃さんのポーズはすごく柔軟で陰影があるというか、そういう印象で好き。それにしても一曲目の可愛いドレスの下からいきなりネオンカラーの縄がばんと出てくるのはインパクトでかかったな…。

 

●萩尾のばらちゃん。「デビュー作」みるたびに、いつかまたこの場所で君と巡り会いたい概念の化身すぎでは…?という思いが毎回新鮮によぎる。この場所じゃなくても何度だって巡り会いたいよと今なら言えるけれど。盆がせりあがったとき、夕陽が射すようなオレンジ色が照らしてるのが曲とも合ってて好き。盆で頬杖ついたのばらちゃんに微笑みかけられてデレデレしないでいられる人いんの? いたらそいつは人の心がないのでは? 盆から本舞台に戻る際に客席を見渡して、一糸纏わぬ姿で幸せそうに一礼するところ、これがデビュー作というのを鑑みても、いろんな想いがあるのかなと感じて毎回ぐっとくる。

のばらちゃんのステージが、新人さんと思えないくらい堂々としているって云われるのをあちこちで見聞きするような気がしていて、それも確かにそうなんだけど、なにより、ここに立てて嬉しいっていう喜びと自己肯定感にあふれているから私はそこがすごく好きだなと思う。

偶数回はこないだの栗橋から出されている「ハート」。これはもう好きって一言では片づけたくないくらい好きになっている。はじめて観たときから白いキラキラのワンショルダーのドレスで踊るぴかぴかの一曲目が結びついていて、それが今現在の私には直球で眩しすぎてなんだか刺さって泣きそうになって堪えたんだけど、なんか普通にバレてたな…? 立ち上がりのときとかはずっと涙目になってしまいもうだめでした。私が。

のばらちゃんはどの演目もひとつずつとても丁寧に大事にしている印象だけど、この演目では特に内にある想いを大事に演じられている気がしていて。だから誰かを大事に思う誰かの心を痛くない強さで柔らかく掴むようになっているのかな。15分くらいの演目の間ずっと「そばにいてくれてる」と感じさせてくれるようなステージでした。これからきっともっと色んな人に大切に想われる演目になっていくんだろうな。

 

●山口桃華さん。私はストリップ初見の友人をもう20人以上は劇場に連れて来たりしているんだけど、事前にその香盤の踊り子さんのご紹介を簡単に説明したりするとき、桃華さんのことは「ストリップ界の至宝みたいな人だと思う」と云ってしまう。主語デカすぎかい。でも桃華さんのステージって、初めてストリップを観るひとがうすぼんやりとでも期待するもの全てがその期待値を超えて詰まってる気がするから。

6頭の大和でも拝見した人魚姫がモチーフの演目がこの日も出されていて歓喜…。今まで幾つも拝見した桃華さんの演目の中で一番印象深いかも。海の中で全部に愛されてる美しい人魚が地上に出て(そういえば大和で観た時は薬の小瓶の中身を使ったドえっち演出があったけど渋谷では少し変わっていた気がした)得られた足で履いたヒールの爪先に愛おしそうに口づける様子が、ただ幸せを願う心と愛情に満ちてて、それがあんまり眩しいので何の涙なのかよくわからない涙がボロボロ出てしまう。

大和でもビシャビシャに泣いてた私のことを覚えていたらしい桃華さんが「どうしてそんなふうに泣いてくれるの?」と尋ねてくれたんだけど、民草に慈愛を注いでくれるけど民草の感情のことはわからない美しいお姫様の問いかけみたいで「善さ」しかなかった。童話の人魚姫から連想するような悲哀が無くて、ただひたすら多幸感で満たしてくれるのがめちゃくちゃ桃華さんの人魚姫って感じだからです、っていうのをとにかくお伝えしなければと思って早口限界オタクになってしまったけど、一応ちゃんと伝えられたからいいか…。

もうひとつの「飲みすぎんなよ」のパリピ陽キャの宴会みたいな選曲。緩急~~~~!!!! ポニーテールを揺らしてあの惜しみないウィンクで人の心を撃ち抜き可愛く明るく踊る桃華さんはアイドル然とした可愛さと華やかさを振り撒き、椅子を使うターンでは扇情的で奔放なエッチおねえさんになり、ポーズを切る時には客席中を満たす慈愛と幸福があふれてて、観てる人の誰もと両想いだと思わせてくれるから最高…。緩急~~~語彙力~~~

 

●アキラさん!!! アキラさんのステージって、どんな演目をしていても一貫したアキラさんらしさに貫かれているなあ、と思う。スケールの大きさ、バレエのステップをとぶ伸びやかな肢体だとか、流れるような脱衣とか、客席に投げかける視線のあたたかさとかそのときに時々みせるいたずらっぽい顔とか、ポーズを切る瞬間瞬間のドラマティックさとか、そういうの。毎度惚れ惚れしてしまう。

ストリップを観始めて確かまだ3回目とかそのへんで全然浅かった時に初めてアキラさんのステージを観て、女神様みたいだな…と直球で思ったときの印象が強い。私は踊り子さんに対して「女神」って言葉を使うのあまり好きではないんだけど、アキラさんってずっと、ストリップを観るうえでの私にとっての女神様だなあと思う。女神様みたいなのに、きれいに筋肉のついた背中に汗が滴ってびしょ濡れになっていくのが神様じゃなく最高に人間……て思わせてくれるからもっと好き。

この日だしていた水色の衣装の演目のほうは、お衣装の感じや後半使用されていたのが某ゲーム楽曲のアレンジverだったことも相俟って、神殿で神様に奉納する舞いみたいな感があってよかった…。説得力がすごい…。ここがラスボス前の大神殿の最後のセーブポイントかもしれない…?あっじゃあもうここに住みまーす…

 

 

この日は20年来の親友と一緒に劇場に来るのは久しぶりだった。コロナとかの諸々で会うのは半年以上ぶりだったけど数週間に一度は電話で喋り通してたのでひさしぶりな感じはしない。まだぜんぜん学生だったしあの頃はバトロワ深作欣二監督の手で映画化されてオタクの間で大ブームになった年だった。バトロワの映画からそんなに経ってんの?ってこともそうだけど、付き合いがもう20年近いのってなんか嘘みたいじゃん。良くも悪くも変わってないところが多すぎて安心する。有事に備えて互いのiPhone指紋認証登録し合ってたくらいには安心感ある。

今日の香盤は一度は観てほしい人ばかりだったから一緒に来れて満足したし友達も満足してたからよかった。どーげきの中エアコンで寒いから防寒具を絶対持ってきなねと口うるさく言った当の私が薄着すぎて震えていた。これだけどーげき頻繁に来てるのにどうして毎年学ばないのか。夏のどーげきは寒い。

桃華さんのステージを数年前に観たときめちゃくちゃよかったと言ってた友達は今日もやっぱりめちゃくちゃよかったと言ってて、桃華さんにまた会いに来ますって言って「あした?♡」って返されて「仕事やめて劇場に住もうかな。寝袋とか持って」って本気の目で言ってた。住むなし。迷惑客すぎじゃん。たまに劇場にすんでるんですかってくらいよく見る人とかもいるけど。

とにかくごはんを食べる暇のない香盤だったので、劇場でてからでっけ~ハンバーグ食べてパフェ食べるというわんぱくをして、あとはずっっっっっと喋り通して日曜日が終わっていった。家に帰るために乗ったバスの中で自分以外の乗客が皆無だったので、今日のポラをひっそり取り出して眺める。宝物にしたい言葉が書かれていて嬉しかった。窓ガラス。雨。車の通りも少ない夜に自分と運転手以外は無人のバスに乗ってるとこのまま異次元に連れていかれるんじゃないかって不安になることない? ある。